忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

「低温ネタ」限定ライブ『ていおん!』に行ってみた

サンキュータツオさんが主催された「低温ネタ」限定ライブ『ていおん!』の14時の回に行ったので、思ったことを、自分用のメモがてら、書いてみた。

失礼なことを沢山書いている気がするので、先に謝っておきます。
大前提として、「誰もやったことがない/見たことが無い」、あるいは「やる場所を与えられていない」もの、つまり「うまくいくかどうかわからない」ものを、「自分で場所を作って、やってしまうぜ!」って実行しちゃう行動力と勇気が、凄い。
演者の皆様に、「楽しいひと時を、ありがとうございます」って言いたい。

 【個別コント感想】
どのコントも、タイトルからは想像つかない斜め上の切り口になっていて、それだけでも楽しかった。

▼「ウェルカム諸注意コント」
いきなり全員黒服なうえ、斜めにズラーっと整列している異様さで、「さぁ日常とは違う別空間に来ました……」っていう気分が高まった!
先生と生徒(?)による質問という形で、諸注意とコントが両立していることが、スマートだった。

▼「病院の診察室」
無能な医者のせいで、小さな理不尽にあう話。理不尽の小ささが、リアル。

▼「飯テロ」
皆が共通で興味を持ちやすい食べ物トークであること、「座布団〇枚!」的なウマいツッコミが敢えてなのか本気なのかわからないこと、「ただの自民党」みたいな床屋談義(※褒めてます)、話題にする食べ物がだんだんと低温になって最後はアイスっていう構成(?)がきちんと(?)あること。
こういう笑い、どっかで見たことあるぞ。……寄席の色物さんだ。

▼「病気の彼女 」
病気の彼女を見舞ったら、これまでの交際が金目当てだったと発覚するも、病気だから強く抗議できない……っていう身も蓋もないブラックさが、楽しかった。
こういうネタは、テレビでやっちゃいけないんだろうか?普通に面白いのに……。

▼「歩きスマホ
「親50人いるから親50回死んだことある」「応援してくれる親と、応援してくれる親を妨害する親と……」
「ていおん!」ライブではあるものの、よくこんな話を思いつくなーって、 爆笑した!

▼「娘さんを下さい」
個人的には、一番好きだった。
男が、交際相手の父親に結婚の許可をもらいに行くのだが、なかなか許可を出さない父親を、反対に屁理屈で、たじたじにする。
「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」「では、期待値お義父さん」
「どこの馬の骨ともわからないヤツに娘をやれるか!」「埼玉の馬の骨です!」
……的なやり取りだけでも楽しいのに、オチの一言が凄かった。
最後、紆余曲折を経て(確か「ビンタと引き換え」みたいな条件で?うろ覚えでごめんなさい)結婚の許可が下り、主人公が義父に「お義父さん……!」と呼びかけたところでコントは終わるのだが、それまであれだけ「期待値お義父さん」呼びを多発し、お義父さんをイライラさせ、観客を笑わせてきた男の「お義父さん……!」には、笑いを生んでいたズレが消え日常の言語ルールに戻った驚きと、そもそもの物語の最終ゴール「結婚の許可をもらう」が完了した達成感っていう、2つの感動が綺麗に集約されているように感じた。
以上のような凄さと、「主人公、幸せになれて、よかった……!」っていう感情移入にダブルパンチされ、コント見たはずなのにちょっと泣きそうになった。

▼「張り紙」
中村シュフの一人舞台。メインはあくまで「張り紙」で、中村シュフはお客さんの代表としてリアクションする。
「スーパーの壁に貼ってある張り紙たちの中で、素っ頓狂なドラマが展開する」っていうアイデアが楽しいし(お買い物をされている時に思いつかれたんだろうか) 、実際に張り紙を用意するのではなく、読み上げた録音を流すっていう見せ方も、「なんだこれ?!」って感じで、面白かった。

▼「心の闇」
最初、ニュースを全部「心の闇」で片づける解説者の話かな……と想像していたら、「心の闇」に韻を踏んだコメントを入れていくっていう斜め上の展開になり、わからなさが増した(のが、楽しかった)。

▼「街角にて」
聖書だと思った冊子が居酒屋メニューだったり、手羽先の写真がめくるたびに大きくなったり、最後は反対に本職の聖職者に捕まったりと、コンスタントに笑わされた。(余談ですが、「『よろこんで』は庄屋」が刷り込まれてたので、あれ?って思ったw)

▼「どんぐり漫才 普通の人編/優しい人編/似た人編 」
三段構えにしたことが、凄い!
「普通の人編」で植え付けられた「なんだこれ?」っていうザワザワが、「優しい人編」で「あ、そういうことか……!」と面白くなり、トリ前の「似た人編」に期待が高まったうえで、爆笑した。
内容についても、不条理炸裂で、「似た人編」の最後はちょっと疲れてくるくらいの面白さだった。
話が通じなさそうな相手に会ったとき、「普通の人」の対応では「なんだコイツ?」で会話が終了してしまうが、「優しい人」として「相手の話をひとまず肯定してあげよう」という姿勢を取ることで、「西に田中君がいて、田中君に会う際の注意」っていう情報まで、聞き出せる。それから、対話を通して「何か一緒にやろう!」っていう行動にまで発展するのは、価値観を共有した「似た人」。
「ああ、人生ってそうだよな……」っていう、対話についての哲学(?)を、場違いながら感じた。

▼「海で待つ」
遠くの海にサーファーが戯れる小汚い海岸の潮風が、会場にさーっと流れていた。
冷静に考えると、存在しない娘への妄想が爆発していたり、犬が飼い主に叛逆したり、社会的な役割があっという間に入れ替わって「私が死んでも替りはいるもの」オチだったり、何一つ笑えないブラックな話なんだけど(そもそも、人間が犬役として出てくること自体、ヒドいw)、「これはこれでありだ……!」って納得した。
「このコント、超笑った~!面白かったぁ☆」じゃなく、「表現を見た、心に残った」っていう、不思議な余韻。

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生きている中でどうしようもなく起きてしまう、小さいかもしれないけど理不尽な事件に対し、安易に笑い飛ばしたり綺麗なオチをつけるのはイヤだけど、「それでも、ギリギリ『笑い』って形で、みんなに共有したい!」っていう逞しさや意地が、「低温ネタ」の醍醐味ではないだろうか。
今から、次回の公演が楽しみ。
あと、凄い生意気な欲を言えば、いつか私も、低温ネタで脚本を書いてみたい。