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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

『思いやりの人間関係スキル 一人でできるトレーニング』:過度な自己主張をしないこと、良い聞き手になること

「思いやりのある人間関係」とは、自分の強さをほかの人に分け与えることではありません。それは自分の弱さや不安、ほかの人の弱さや不安と向かい合おうとすること、そしてそれらを満足のいくやり方で取り扱おうとすることです。このような試みの中に、人間としての強さが宿るのです。(p.1)

 超超超久しぶりに風邪(体感的には3年ぶりくらい?)を引き、2日間寝込んでいたら、東京ポッド許可局が「愛とは何か」という議論をしていて、「思いやりについて、ちゃんと考えたことがなかったかもしれない」と思った。なので、読んでみた。

「スキル」という言葉だけを聞くと、星の数ほどある「なんちゃって自己啓発本」のように見えるが、具体的かつ膨大な量の会話例・アドバイスを載せた親切な本で、47個の練習問題と14個の実験(実践課題)、さらに「私は今から本書で提示されたスキルを使って、思いやりのある人間関係を作れるようにします」という契約書まで付いている。

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以下、雑な書き抜き。

①自分の価値を必要以上に高めたり下げたりせず、適切な質や量の自己開示を、適切な仕方で行おう

大人は大きくなった子どもです。ほかの人を愛しているかどうかは、自分の中の直感的な「子ども」が、外側は大人の姿をした相手の中の「子ども」と一緒にいたがっているかどうかで見極めることができます。また、相手の中の「子ども」のために配慮してあげたいと思っているかどうかも重要です。しかし子どもは、特に、心理的な傷を管理するスキルが未熟な子どもは、心理的な傷や傷跡を持ったまま大人になります。大人はしばしば多くの恐れや不安を抱えています。(p.46)

→自分が何に不安や恐れを抱いているか自覚するところから始めましょう、という練習問題が付いている。 「え、大人って子どもなの?!」って、頭をガーンと殴られた。自分がとっくに成人していたことを思い出し、「そっか、大人でも、大人げない振舞い、つまり子どもっぽいことしちゃうな……」って、納得した。

自分をあらわにすることが、あまりに少なすぎても多すぎても、心理的な不適応の原因、または徴候になります。(p.86)

自己開示に関する研究での主な発見は、開示の親密さの水準が二者間で一致する傾向にあるという点です。一方が自分の秘密を徐々に話していくと、相手も自分の秘密を徐々に話し始めるのです。このような現象が起こるのは、お互いが自分のことを話そうという意志を持っているからですが、お互いが相手のことを聞こうとする意志も大きく関与しています。(p.109)

→「何を言うか、だけでなく、いかに言うか」も大事ですよ、という視点から、身振りや発声にまで言及する徹底ぶり(【実験1】は、自分の声をレコーダーに録音し評定してみましょう、というものだった)。

心を開くことは恐ろしいことです。時には自分で自分の感情が気に入らないかもしれません。また感情を表現した結果が、自分やほかの人にどんな影響をおよぼすか考えると恐ろしくなるかもしれません。しかしリスクは、感情を分かち合うときばかりでなく、感情を分かち合わなくても生じるのです。もし感情を分かち合わず、いつまでも一つの感情にとらわれていれば、私達は活力を失ってしまいます。ほかの人はこちらを理解できず、自分でも自分のことが分からなくなります。これでは、人間関係の中に「未完成の仕事」が残ります。……否定的な感情に対処しておかないと、肯定的な感情や思いやりの感情を表現したいという気持ちが起こりません。(p.98)

→自分の感情を上手に伝える第一歩として、感情に適切な名前をつけることが大事で、そのために感情の語彙を増やそう、という指摘が面白かった。

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②相手が安心して話をできる環境を、言語的にも非言語的にも作ろう

大人にとっても、聞くということはほかの人を肯定したり、否定したりする機能を持ちます。うまくいっていない人間関係で最もよく言われる不平は、一方または双方が話を聞かないということです。……誰でも、相手の話を聞かなければ、相手が抱えている重荷の重さを知ることはできません。(p.108)

→相手が話をしやすくするために、「話のきっかけを作る」「小さな報酬(相槌)を与える」「開いた質問をする」は、言われればその通りだが、日ごろ実践できてないことが多い。

③内的観点を大事にしよう

「あなたについてのあなたの見方」と「私についての私の見方」のことを内側からの見方、あるいは内的観点と呼びます。他方、「私についてのあなたの見方」と「あなたについての私の見方」のことを外側からの見方、あるいは外的観点と呼びます。ほかの人の話に耳を傾け、ほかの人を理解するスキルは、外的観点ではなく内的観点によって、「私」と「あなた」の違いを十分に認識することに基づいています。相手の見方を正確に示して相手に反応するならば、それは、相手の内的観点から反応していることになります。(p.111)

→これが、「相手の立場にたって考えよう/行動しよう」、すなわち「思いやり」という言葉でまず思い浮かべられるものだろう。でも、エスパーじゃない限り、相手が何を思っているか、理解するのは難しい。
①②とあわせ本書が推奨しているのは、自己開示をまじえながら、相手が話をできるような環境を作り、相手の話の中から感情を表現するのに使っている言葉を拾い上げ、「あなたは~だから、~と思っているんですね」という助け舟を出す、という方法だ。その際に大切なのは、「語句を言い換える」ことと、「感情を反射させる」こと。「上手な語句の置き換えは、ちょうど鏡のように、最初の人の発言よりもかえって明瞭で簡潔に言葉を反射させています。従って場合によっては、話し手から「その通りなのよ」とか「私が言いたいことを分かってくれた」と感謝されることがあります。語句の言い換えが不十分な場合もあります。特に、言葉にばかり注意が払われている場合にそう感じられるので、音声メッセージやボディ・メッセージも使う必要があります。」

他にも、双方にとって健全な性的関係をどう作るかとか、怒り(争い)を建設的に管理するにはどうしたらいいか、とか載っていたけど、基本的には「自分を適切に主張しながら、相手の話を聞き、互いにとって満足できる解決策を得る努力をしましょう」というものだった。
当たり前のことなんだけど、とても難しい。
個人的には、株式投資も研究も、公開(あるいは非公開)情報を一方的に集め、適切なテーマを探る作業だが、人間関係においてはそれだけではダメで、適切な自己主張に力点を置いているところが、目から鱗だった。やりたいことや言いたいことを、人目を気にせず実行してしまう図々しさには自信があったが、それって実は、周りの大人に許してもらっていただけなんだ……。
「本を読んだから、即思いやりのある人間になれる」ってわけじゃないけど、読んで良かったと思った。