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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

雑な感想:劇場上映「ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市」

劇場上映「ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市」、および
・『Kanón』
・『Sex&VIOLENCE with MACHSPEED』
・『オチビサン
・『ENDLESS NIGHT』
・『新世紀いんぱくつ。』
・『機動警察パトレイバーREBOOT
の、適当な感想です(ネタバレ?あります)。

"オリジナル企画・スピンオフ企画・プロモーション映像・MusicPV・VJFilmetc...
ジャンルを問わず愛と勢いで創りきる数々のオムニバスアニメーション
期間、予算等を制限した中での企画開発、R&D、人材育成、自由な創作の場として
この先の映像制作の可能性を探るWEB配信アニメーションシリーズです。"

2014年に始まって以来、存在はなんとなく知っていて、何作品かはweb公開時に単体で見たことがあった。これまで3シーズン(+EXTRA)で36作品が公開され、その中の選りすぐりを劇場で上映(今回上映されたのは13本でしたが、36作品からなぜこの13本が選ばれたのかは、調べてないのでわからないです)。劇場上映イベント自体は、今回で2回目っぽい?

ざっと見の全体的な感想は、


みんな「おっぱい、ロボ、爆発」好きすぎ。13作品中、これらが出てこなかった作品は『オチビサン』『ENDLESS NIGHT』の2つだけ(『鼻下紳士回顧録』は、おっぱいにカウントしていいかグレー)。アニメーター見本市とはいえど、監督の自主制作(個人プレー)ではなく商業アニメーションスタジオに所属する人との共同作業(チームプレー)、加えて限られた期間と予算と来れば、ゼロからの自由な発想ではなく、今の日本アニメの共通言語である「おっぱい、ロボ、爆発」を使って作る方が手っ取り早い、という判断からの結果だろうか。その「おっぱい、ロボ、爆発」大喜利にしても、斬新に感じたのは TRIGGER今石監督の「Sex&VIOLENCE with MACHSPEED」だけで(理由は後述)、あとはみんな80年代好きね~って感じである。


短編アニメーションとして完結した作品ではなく、「テレビシリーズの第一話冒頭」のような作品が多かった。13本中、5本くらい? 短編アニメーション見本市ではなく、あくまでアニメーター見本市なのだから構わないっちゃ構わないが、全く知らないテレビ作品を、何の説明もなく1話冒頭だけ中途半端に見せられるようで、意味不明。シナリオ目当てではないにしたって、見るのが辛い作品がいくつかあった。


・声優を使う作品とそうじゃない作品があったが、使う作品では登場人物が何人いようと、キャストは山寺宏一林原めぐみだけ。だから、最後の方は「山寺宏一林原めぐみの演技見本市」だった(笑)

 

心からびっくりした作品はなかったが、いくつか気になった作品があったので、簡単に書く。

 

『Kanón』

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前田真宏監督・脚本。アダムとエヴァの物語を下敷きに、自分が作った土人形に翻弄されるアダムの顛末を描く(シナリオすげーなと思ったら、どうやらカレル・チャペックの戯曲が原作らしい)。アートアニメに突如登場する美少女&エヴァ字幕芸が、前田監督ご愛敬。ふだんの仕事から離れて、作りたいモノを作った、という自由さを1番感じた。

 

『Sex&VIOLENCE with MACHSPEED』

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今石監督&TRIGGER組の作品。お馴染みのTRIGGER節(ハンナバーベラ×美少女)を、地上波じゃ絶対に放送できないレベルのエログロにまで高めた作品。転んだゴム製ダッチワイフが、男性キャラクターの股間にいい具合に収まり、ダッチワイフが着地した衝撃から上下しているうちに男性が射精。事後、ダッチワイフの子宮にたまった精液が、ダッチワイフの太ももに零れてつたう描写が執拗にズームされる。突き放したクールな視点、意地の悪さが心地よかった。ルーツ(ハンナバーベラ)が他の作品(80年代的美少女)とは違うという点が「おっぱい、ロボ、爆発」大喜利の中では珍しく、好感を持った。

 

オチビサン

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安野モヨコ原作漫画によるコマ撮りアニメ。監督は広告代理店出身の川村真司、制作はCM制作会社太陽企画と、布陣からして他の作品とは毛色が違う。うちわや湯呑みの微妙な陰影を完全にトレースしたアニメーションに、コマ撮り技術の高さを見せつけられた。こうしたルックスが、「オチビサン(幼児)を主人公に日本の四季の移ろいを描く」というテーマとあいまって、「おっぱい、ロボ、爆発」大喜利の中で一服の清涼剤となった。

 

『ENDLESS NIGHT』

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大本命その1。現在、絶賛放送中のフィギュアスケートアニメ『ユーリ!!! on ICE』の山本沙代監督がユーリ直前に公開した作品ということ(しかも題材はフィギュアスケート)、また、日頃個人的に尊敬しているブロガーさんがユーリよりこちらを絶賛している、とのことで、楽しみにしていた(1度、webでは見ているのだけれど)。改めて3つ面白いなと思うところがあった。1つ目は、アニメでしかつけない嘘があること。テレビで見たフィギュアスケート選手に憧れた男の子が、その振付をコピーしながら、学校の廊下、電車の車内などで踊りまくるという描写(もちろん男の子の妄想であり、実際には選手が試合に使った曲を音楽プレイヤーで聴いているにすぎない)は、実写では実現しづらい絵面である。

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2つ目は、影の表現にスクリーントーンのような演出を採用している点スクリーントーンを使うことで、キャラデザを担当した漫画家・上條淳士の絵がそのままアニメになった(動いた)ような印象を与える反面、画面全体にかかる均一の大きさのドットが、時折画面内の遠近を殺してしまうことが気になった。特に、氷上で縦横無尽に動き回るスケーターのシーンで、その違和感が大きかった(もしかしたら、山本監督は違和感を承知の上で、上條漫画へのリスペクトを採ったのかもしれないが)。3つ目は、「おっぱい、ロボ、爆発」大喜利の中で、そのどれにも当て嵌まらないということ。今回上映された13本のうち、今作だけが女性による監督作品だ。もちろん女性でも、たとえば京アニ山田尚子監督のように「美少女」が好きな方も沢山いるが、山本監督はそうではない、ということを改めて感じられる作品だった(手塚-吾妻ひでお路線ではなく、上條淳士をキャラデザに持ってきた時点で「おっぱい、ロボ、爆発」とは一線を画す)。女性アニメファンの台頭により「おっぱい、ロボ、爆発」で溢れかえっていた状況が崩れつつある現在の日本の商業アニメのシーンを反映しているようで、興味深かった。とはいえ、「おっぱい、ロボ、爆発」のオルタナティブが『ユーリ!!! on ICE』(=腐女子or夢女子)というのも、根っこのメンタルは同じなようで、つまらないが。

 

『新世紀いんぱくつ。』

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この作品は、「おっぱい、ロボ、爆発」大喜利の代表として、悪い意味で印象に残った。エヴァンゲリオンの世界で(あ、エヴァの公式スピンオフだったんですね)、中途半端なCGで出来た中学生ネットアイドル3人組による、通俗的な百合ドラマ。いつまでもエヴァを引きずったり、あるいはラブライブアイマスに熱中したりするオタクを小馬鹿にしているのか、それとも本気でやっているのか。監督の真意が気になった。監督本人と思しきツイッターに並ぶ「ゴミ人間のようだ」「すぐ死にかけるのよくない」「人と会わねば」「外に出ねば」という投稿とあわせ、興味深くはあった。

 

機動警察パトレイバーREBOOT

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大本命その2。『イヴの時間』吉浦康裕監督×パトレイバーという、まさかの布陣。今作の情報が発表されて以来、「ルパンにおけるカリ城、「うる星」における「ビューティフルドリーマー」になるか、もしくは企画倒れの寒い作品になるか?!」と1人興奮していたが、結論としては、8分間の作品だけじゃ何もわからなかった(笑)
特徴としては、まるで今の東京そのままのような光景をした「東京」を舞台にしていること(劇中で登場する日暮里の街並みや山手線のホームは、今現在のそれとほとんど同じのように見え、SFファンタジーらしさは無い)、「僕たちは、ロボットアニメの主人公じゃない。町と人々を守る警察官なんです」というセリフが象徴するように地に足の着いた警察ドラマを志向しているようだ、ということ。すなわち、パトレイバーという嘘以外はつかない、という姿勢押井守のような堅牢な思想ではなく、「自分の能力と責任に応じ、やるべきことを淡々とやる人間でいよう」という細やかな矜持が、2010年代らしさとは言えそうである。

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日本アニメーター見本市でも「EXTRA」と特権扱いされているあたり、今回の公開の反応を見て続編(吉浦監督による新シリーズ)のゴーサインが決るか、あるいは既に始まっている新シリーズの宣伝としての今作か。今後の動向が気になる。

 

……以上、結局は「おっぱい、ロボ、爆発」ジャンルそのものが嫌いなんじゃねーか!!と、自分で突っ込みたくなるような感想でした。「おっぱい、ロボ、爆発」に開き直って初めて、エヴァまどマギのようなアニメが生れるんだ、という自覚はありつつ……