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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

2016年上半期ベスト3書き散らし

映画

選出理由は、好みです!(ぼわー) 好みで選んだ3作と、その理由についての素人の書き散らしです。各作品がっつりネタバレしているのでご注意ください。

 

1位 『サウルの息子』 ~歴史が1番恐ろしい~
2位 『同級生』 ~3D全盛の時代にこそ映える手描き風アニメ~
3位 『ヘイトフルエイト』 ~タラちゃんなんちゃって歴史モノ路線の集大成~
まとめ

 

1位:サウルの息子

f:id:newladyrossa:20160707022908j:plain<あらすじ>1944年10月、ハンガリー系ユダヤ人のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所でナチスから特殊部隊“ゾンダーコマンド”に選抜され、次々と到着する同胞たちの死体処理の仕事に就いていた。ある日、ガス室で息子らしき少年を発見した彼は、直後に殺されてしまったその少年の弔いをしようとするが……。(Yahoo!映画より)

未だにトラウマチックに思い出す一本になってしまっている。アウシュビッツの歴史を追体験させたい=このような惨事を二度と繰り返させたくない、という作り手側の意図は素晴らしいし、その意図はかなり高い水準で成功している。 

◆良かったところ
映像上でも、脚本上でも、アウシュビッツに収容された1人のユダヤ人の人生を追体験する工夫がはりめぐらされている。

①えいぞうのくふう
正方形に近く、ピントがひどく浅い映像が特徴的。強制収容所で心を失い、目の前の出来事に心を閉ざすサウルの視野、そのものである。

また、ガス室のシーンをはじめ、あえて死体を直接映さないため、観客は「画面のはじっこにぼんやり移ってるピンクの山はなんだろう……?」と、自分の想像で惨状を補完することになり、直接的に映すよりも、胸に迫る。

f:id:newladyrossa:20160707023126j:plain<ミロのヴィーナスは、腕がないからこそ印象に残る>

②きゃくほんのくふう
メロドラマや英雄譚や安易なハッピーエンドで処理しないことはもとより、余計なドラマを削ぎ落し、「サウルと少年の死体」の狂った関係にスポットをあてることで、シンプルだが力強いメッセージを投げかける。さらに、実は「息子がいる」というのは追い込まれたサウルの妄想に過ぎず、サウルが守り抜こうとしていたのは赤の他人の死体だった……という展開や、脱走できたと思ったら最後の最後に見つかって殺される……など、観客がついつい望んでしまうフィクショナルな希望を、ひたすら打ち砕いていく作り。アウシュビッツという題材に対し、そのような作り方をした作り手の厳しい倫理観に胸を打たれる(ちなみに、「死者の扱い方」というのは、その人の人間性が出る最も濃厚な瞬間だろう。少年の死体に執着するサウルの姿は、ユダヤ人を効率的に焼き殺すナチスと対極的である)。
鑑賞後の疲れは、アウシュビッツの絶望の重さそのものだ。

ほぼ自然音のみの映画なので、エンドロールの音楽はどうするんだろう……無音かな……と思ったら、バイオリンのソロの後に、ひたすら炎がパチパチ燃える音が流れたことに、肝を潰された。この火は、ドラマに沿って解釈すれば強制収容所でユダヤ人が焼かれる地獄の炎であり、ドラマの外から解釈すれば、鎮魂の聖火である。

 

◆惜しいなー!とおもったこと

全体的に、ちょっと冗長に感じてしまった。特に、冒頭~タイトルが出るまでの、アバンが長い。映画の終りがみえない苛立ちは、サウルがアウシュビッツで体験した終りのない地獄そのもの……と言ってもいいかもしれないが、もう少し絞って見せることもできたかも。

 

◆拍手

この映画を作ることは、きっと精神的にとてもキツい作業だっただろうが(演じるのもイヤだし、大道具や特殊メイクさんの作業も中々やりきれない…)、関わったすべての人が「それでもこの作品を撮らなければ!!!」という使命感に駆られて、最後までやりきったんだと思う。そのことに拍手を送りたい。

 

2位:同級生

f:id:newladyrossa:20160707023502j:plain<あらすじ>バンド活動にのめり込み女子生徒からの人気を集める草壁光と、入試で全ての教科で満点を取った秀才の佐条利人。容姿も言動もかけ離れていた二人だが、放課後の教室で合唱祭の練習をしたのを契機に言葉を交わすようになる。草壁が佐条に歌を教えるうちに二人の距離は近付き、お互いに恋の感情を抱いていることに気付く。ストレートに思いをぶつけてくる草壁を拒んでいた佐条だが、少しずつ彼を受け入れていくように。そうして寄り添う二人に、進学を考える時期が訪れ……。(Yahoo!映画より)

 

シナリオ(ボーイズラブ)はどうでもいい。

今年も絶好調だった「コナン」や、劇団ひとりを脚本に迎えた野心的な「クレヨンしんちゃん」等のジャパニーズ老舗アニメはもとより、天下のディズニー謹製『ズートピア』を差し置いて、これが2位ってのも、我ながらどうかと思うけど……だって素晴らしかったんだもん……アニメートが……

 

3位:ヘイトフルエイト

f:id:newladyrossa:20160707023621j:plain<あらすじ>雪が降りしきる中で馬を失った賞金稼ぎマーキス(サミュエル・L・ジャクソン)は、同じ稼業であるジョン(カート・ラッセル)と彼が捕らえたデイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)を乗せた駅馬車に同乗する。途中で保安官を名乗るクリス(ウォルトン・ゴギンズ)を拾った馬車は、猛吹雪から避難するためにミニーの紳士洋品店へ。メキシコ人の店番ボブ(デミアン・ビチル)や怪しげな絞首刑執行人オズワルド(ティム・ロス)などの存在にジョンが強い警戒心を抱く中で、事件が起こる。(Yahoo!映画より)

 

いつものタランティーノ作品。密室ミステリーなんて鼻から期待しない。ネットに脚本流出したとかUltra Panavisionとか種田陽平とか本物のアンティークギター壊しちゃったとかスタッフ全員が「We love making films!(だって僕らは、映画作りを愛してるからさ!)」と叫びながらリテイクしたとか、聞こえてくる数々の制作伝説。そして出来上がったのはグロの果てのナンセンス。痺れます。

いくらリンカーンの手紙を引用しようと、「白人と黒人が手を取り合うのは、共通の敵(本作では女性)が現れた時だけ。平和なんて無いんだよ」っていう、シニカルで大人で絶望的なメッセージは、『イングロリアス・バスターズ』でショシャナに敵討ちをさせちゃった頃に比べると監督は大人になったのか……?と思いつつ、タランティーノはそろそろ、ナチスとか黒人差別をマクガフィンに借りる娯楽作より、自分自身の課題に向き合って、オタクを主人公にした物語を作った方がいいんじゃないのでしょうか。

タランティーノ偽史路線を批判するというよりは、彼がユダヤ人なり黒人なりに同化し世間に対して怒りを燃やす理由、その原体験が、1ファンとしては(残酷ではありますが)とても興味深く、率直に曝け出してもらいたいのです。

 

まとめ

以上、適当な感想でした。全体的には、『ライチ☆光クラブ』『アイアムアヒーロー』『少女椿』『ヒメアノ~ル』『ディストラクションベイビーズ』『日本で一番悪い奴ら』など、過激なエログロに振った日本映画の健闘が目立ったような気がしました。

予算たっぷり!技術さいこう!なハリウッド視覚スぺクタルのスケールに対抗しようとして返り討ちにあった、進撃や火星ゴキブリのことを思うと、人間の根源的な娯楽の原点に戻り、低予算でもある程度の見応えと話題を生むことが可能な「血みどろおっぱい路線」は、悪くない判断だと思います。遠い昔、遥か銀河の彼方の物語と同じくらい、理不尽な隣人が惨殺を繰り返す映像を、残念ながら私たちは面白がってしまうものです。

 

下半期もどんな映画に会えるのか楽しみです。