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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

2次創作「映画泥棒が映画泥棒になった理由」

ショートショート
映画泥棒は、しがないフリーターであった。
アルバイト先の人間と2,3言会話をかわす以外は、趣味である映画鑑賞に没頭する生活を送っていた。
ある日、ふとした出来心から、新作映画の舞台挨拶を盗撮した動画をニコニコ動画にアップした。
動画は一晩でランキング上位に食い込むほどの再生数を叩き出した。
「まじで見たかった!!超ありがとうございます!!!」「うp主は神」という感謝から、「しね」「こーゆーヤツがいるから業界が苦しいんだよ」という批判まで、数万のコメントが寄せられた。
味をしめた映画泥棒は、やがてアルバイトを辞め、海賊版DVDの販売で生計を立てるようになった。
映画泥棒という名前は、映画館同盟のブラックリストに載り、業界人をじみ~に不快な気持ちにさせた。
 
若手ながら優秀な映画警備員のパトランプは、これまで幾度も失敗してきた映画泥棒逮捕作戦の陣取りを任され、とうとう映画泥棒を現行犯で捕まえることに成功した。
取り調べは難航し、意味不明な逆ギレと黙秘を繰り返す映画泥棒に、映画館側は手を焼いた。
パトランプは映画泥棒をまじでゴミ野郎だと思った。
カツ丼を運ぶ係に任命されてしまったため、仕方なく、休憩時間の人払いされた取調室に入った。
 
「カツ丼です。さっさと食べて、取り調べに協力して、早く刑務所にぶち込まれて下さい。みんなが迷惑してるんですよ。」
「……あんたには、俺の気持ちが一生わからねぇだろうな。」
「わからないですし、わかりたくもないです。」
 
うつむく映画泥棒の膝に置かれた両手が小刻みに震えていることに、パトランプは気が付いた。
コイツは本当に許せないけど、何か言わなきゃいけないような気がした。
 
「あなた、盗撮がとっても上手なんだから……出所したらその経験を活かして、映画警備員になったらどうですか。」
 
(僕たちもきっと助かります。)と続ける前に、映画泥棒は堰を切ったように泣き出した。
 
その後、映画泥棒が警備員になることはなかったが、今ではパトランプと共演する啓蒙広告の出演料で、映画鑑賞に没頭する生活を送っている。