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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「最後の支配人」

明日から、仕事がなくなる。
 
といっても、嘆くことではない。
 
全世界が協力して開発したアンドロイド労働体制が完成し、人類が初めて、労働から解放されることになった。
農業や漁業は言うまでもなく、公共工事発電所の運転、レストランやショッピングモールの接客、すべてをアンドロイドが行うことになった。
アンドロイドの動力はアンドロイド自らが生産するため、人間が余分な対価を支払う必要はない。つまり、何もかもタダで享受できるようになるのだ。こんなに素晴らしいことはない。
 
かく言う私の職業は、東京のはずれにある、小さな映画館の支配人である。
祖父の代から続く劇場であったが、3駅先にシネコンができて以来、東京都内であるにも関わらず客足にだいぶ苦戦していた。
しかし、その苦労も今日で終わりだ。明日からはきっと、仕事がなくなり暇になった人たちが、大量に押し寄せるに違いない。私もその1人になるだろう。
 
引き継ぎ業務に来ていたアンドロイドたちの肩をポンポンと叩くと、私は劇場を後にした。
人間が労働をやめた時代に、誰が脚本を書き、監督をし、映画に出演するのだろうか。
そんな疑問がふとよぎったが、まぁ、アンドロイドに任せておけば万事大丈夫だろう。