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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「デイドリーム・ビリーバー」

ショートショート
小太郎には、夢があった。
それは、ハリウッドスターになって、レッドカーペットを歩き、オスカーを勝ち取ることだ。
 
小太郎の家は、WOWOWに契約していた。
お母さんが掃除をしながら付けていたアカデミー賞の授賞式の中継を、小さかった頃の小太郎は偶然に見た。
そこには、自分の周りにいる人間たちと同じ種族だとは思えないくらい、美しくて堂々とした人たちが、真紅のカーペットの上で誇らしげにふるまう姿が映されていた。
その時は、俳優どころか映画というものがあることすら知らなかったけど、彼ら彼女らはただ外見がキレイなだけじゃなくって、みんなから愛されるに値するスゴイことを成し遂げたんだ、ということは、すぐにわかった。
 
僕も、あんな風になりたい!
 
それ以来、小太郎はハリウッドスターになるための特訓を、熱心にやるようになった。
朝と晩には鏡の前で身だしなみをチェックしたし、家族の誰かがリビングで映画を見る時は必ず同席して、セリフを一生懸命覚えた。
アクションを頼まれた時のために、ジャンプやほふく前進の練習もたくさんやった。
発声練習は言うまでもない。
 
あまりに夢中だから、デカプリオが悲願のオスカーを手にした時のポスターを手に入れたお父さんは、リビングに飾ってやった。
お母さんも、玄関のじゅうたんを赤色に新調しながら、ため息をついた。
 
「小太郎、最近、明け方も外で騒いでるでしょ。ご近所から、うるさいってクレームが来てるのよ。最初は面白がって協力しちゃったけれど、もう3年近くああなのよ。もしかしたら、本気でハリウッドに行くつもりなのかしら。」
 
「まさか。お前に影響を受けて、たまたまスターとか映画とかが好きなだけだよ。それに、どんなに頑張っても、犬はハリウッドに行けないさ。そのうちやめるよ。」
 
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僕は、本当の両親を知らない。
今のお父さんとお母さんは優しいけれど、ときどき夜中に目が覚めて、1人庭に出て泣くことがあった。
もしもレッドカーペットに立つことができたら、もう泣かないですむような気がした。
だから、この夢を叶えなきゃ。
もっともっと頑張らなくちゃ。
ワンワン。