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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「ピッツァが君を作るんだ」

ショートショート
ディアボラは、フランチャイズチェーン「ナポリ・ピッツァ」で働くスタッフだ。
彼の担当はインストアで、注文を受けたピザを焼いて宅配スタッフに渡すことが、主な仕事だった。
一日の終わりに、店長が集計した売上を本部へ報告することも、彼の日課の1つだ。集計にはとあるカラクリがあり、1日の実売上に複雑な課程の計算が施された後、平均して30~50%水増しされた数字が、本部へ報告された。それが、「ナポリ・ピッツァ」で働くスタッフの、極秘の掟だった。
ナポリ・ピッツァ」は、国内で唯一ピザを扱う国営企業。各店舗からの報告をもとに、毎週金曜日に「今週のピッツァランキング」と称して、今週売れたピザの上位10種類と、それぞれの売り上げ枚数を発表する。国民は週末をともに楽しむピザを、そのランキングをもとに決めていた。
国が自国農業を保護したい時は、地元産の食材を使った「ナポリスペシャル」が1位になり、反対にある国と貿易関係を強化したい時は、輸入品をふんだんに散りばめたピザが上位に入った。
ディアボラは掟通りに計算をこなし、かさましされた数字を本部へ報告し続けた。売り出す前からスタッフの間で不評だった「ナラヅケ・スペシャル」も、販売初日から大量のクレームが入った「デラックスヨーグルト」も、ランキング発表後に殺到する注文を機械のような正確さでさばき、無数の食卓に送り出した。
 
「君がピッツァを作るんじゃない。ピッツァが君を作るんだ」。これが店長の口癖だった。その心は、「人は、他の人が食べてるピザが食べたくなる」といったところだ。
 
たいていの人間は、確固とした意志を持って夕飯のメニューを決めるわけじゃない。
みんながこんなに食べているんなら、オレも私も、このピザを頼もうかしら。そうやって、夕飯を決めるもんだ。
お前はピザが大好きで、多くの人にピザを食べてもらいたくて、この会社で働いてんるだろ?