読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「シンデレラと残念な王子」

シンデレラは悲しい玩具だった。
彼女は、とある長寿アダルトゲームシリーズに登場するヒロインの1人だ。カボチャの馬車も、素敵な舞踏会も、ユーザーにとってはエロCGを回収するための作業に過ぎない。
ゲームの佳境、ガラスの靴の山から彼女にぴったりの一足が見つかった時が、ユーザーのご褒美、お楽しみの時間の始まりの合図。
毎晩毎晩、無数の画面であられもない姿を晒しながら、シンデレラはひっそり泣いていた。
 
そんな中、1人の中学生が、シンデレラに熱烈に恋をした。少年はそれから必死に勉強して優秀なプログラマーになり、シンデレラを開発しているゲーム会社に入社した。
憧れの仕事に就いた青年は、プログラミングの腕をさらに上げようと、猛進した。
 
「10年間ずっとヒロインをやってきたけど、もう耐えられない。」
「待ってて。必ず僕が、君を助けるからね。」
 
青年は、ある日とうとう、二次元の事物を三次元に変換するプログラムの開発に成功した。
プログラムをゲームエンジンに組み込み、震える手でエンターキーを押した。
 
ビビデバビデブー。
 
青年の目の前に、夢に見たまでのシンデレラが現れた。
開発画面には、ガラスの靴の山だけが残った。
全国からバグの問合わせ電話がひっきりなしにかかってくるのも耳に入らず、恋する2人は手に手を取って、青年の部屋へ向かった。
 
その晩、憧れのシンデレラを前にして、青年はベッドで全く使い物にならなかった。
緊張のせいではない。
長年の約束を叶えるために、私生活を犠牲にして仕事に打ち込んできた青年は、実在の女性と恋に落ちる時間などもちろん無くて、二次元の女性にしか反応できない身体になっていた。