忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「スーパーヒーローひろしくん!」

アニメ「スーパーヒーローひろしくん!」は、20年間続いている長寿番組だ。
しかし最近は、続々と登場する競合アニメや、アメコミ映画の人気に押され、視聴率が低迷していた。
 
「みんな、大変だ!4月の番組改編にあわせて、とうとう僕たちの番組の打ち切りが決定したらしい」
「そんな!去年から新しいキャラクターも登場して、これからってところじゃないか。」
「やっぱりね。今やこの番組を見るのは、大きなお友達ばかりさ。 肝心の子どもたちが見てなくて、おもちゃが売れてないのは知っているだろう。何を今さら驚くんだい?」
「私なんて、テレビの前のオジサンたちのために、スカートの丈が毎年どんどん短くなるのよ。やってらんないわ!」
「僕だって「夢はいつか叶うよ!」って言わされながら、20年間戦ってきて、今だにチャンピオンヒーローになれないんだぜ!」
「そりゃ、お前がチャンピオンヒーローになっちゃったら、番組が終わっちゃうからな。ははは。」
「打ち切りになったら、俺たちどうなっちゃんだろう?」
「しばらくはネットで話題になって、ニコニコ動画に追悼MADが上がったり、ワンドロのお題になってイラストを描かれたりするだろうけど……」
「3年後には、もう誰も覚えていてくれないかもしれない。そうしたら……」
「3年?バカ言ってんじゃねぇ、このご時世、終わったアニメのことを半年も覚えてるような暇な人はいねぇよ。」
「みんなに覚えてもらえなくなったら、いないことと同じってことでしょ。私たち、半年後には消えちゃうの? 死んじゃうの?」
「僕たちの視聴者は、そんな薄情な人たちじゃないって!きっとずっと覚えててくれるよ!」
「だったらどうして、打ち切りになるんだよ?20年間、毎週毎週戦わされて、こんな酷い仕打ちはないぞ。」
「あのさ、「ポケモンショック」って、知ってる?1997年に起きた放送事故で、モンスターのバトルを表現するために使われた演出が、一部の視聴者に光過敏性発作を起こして、ニュースでずいぶん話題になった事件」
「数百人の子どもが倒れて、救急車で運ばれたってやつだろう?おまえ、まさか……」
「打ち切りになって、視聴者に忘れられるくらいなら、こっちから忘れられない事件を作ってやればいいのさ!」
「だからと言って、そんなことはしちゃいけないわ!」
「どうせこの番組を見てるのは、子ども向けアニメに興奮するような気持ち悪いオタクだけだろう?彼らの人生にとって、むしろ良い薬になるぜ。」
「僕は反対だ。正義のヒーローはそんなことできない。」
「じゃあ、お前は消えてもいいっていうのか?20年間、テレビ局の金儲けのために働かされ続けて、用済みになったら殺されるなんて、俺には耐えられない。」
「そ、それは……」
「俺は賛成だ!放送の最後に、ポケモンショックどころじゃない派手な戦闘をやってやるんだ。そうすれば、テレビでも話題に載るし、ギネスブックにも登録される。」
「そうしたら、私たち、歴史に残るのね!消えなくてすむのね!」
 
ひろしくんたちが話し合いを続ける中、敵役のダークマンは、相変わらず仲間はずれにされていた。
 
「ちぇっ、また1人仲間外れだ……番組が20年間続いているのも、俺様が毎回あいつらの邪魔をして、わざと負けてやってるからじゃねぇか!もう我慢できねぇ。こうなったら1度、飛びっきり強い攻撃をして、あいつらをギャフンと言わせてやる……。よし、そうと決まれば、さっそく念入りに準備をするぜ!」
 
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「スーパーヒーローひろしくん!」最終回は、開始1分で主人公たちがボコボコに倒されるという極めて奇抜な内容が、ネットでしばらく話題になった。