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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「腐敗」

あるホテルに、見るからに身なりの貧しい客がやってきた。
その男からは、腐った魚のようなひどい悪臭がしたが、どうやら一泊する金は持っている。
困り果てたフロントマンは、スタッフルームに飛んで行った。
 
「どうしましょう……マネージャーの判断に、お任せします」
「マ、マネージャーって言っても、私は派遣社員ですよ。下手に強気に出ても、後で何かあったらどうしましょう。」
「悪臭がする客は追い返してよい、という法律はないですぞ!どうしますか。」
「お泊めするべきですわ、ね、そうしましょう!きっと神様の使いよ。私たちの信心を試しているのだわ!」
「むかしの中国で、王妃が貧民の格好をした客をお風呂に入れてあげたら実は神仏の化身で、その国は繁栄したって話が、wikiに載ってるよ。」
「接客する我々にとっては不快だが、ホテルの利益という点から考えれば、儲けは一般客と変わらないうえ、どんな客にも一流のおもてなしをするという評判が立つというメリットに対し、追い返したことが悪評として広まるデメリットの方が大きい。」
「……どっちでもいいですけど、あたし時間なんで休憩もらっていいですか?」
 
ただ1人、ドアマンだけが、異議を唱えた。
 
「てめぇの頭で考えてみろ、あんなのは客じゃねぇ!さっさと追い返しちまえ。」
「おい、お前は若造のくせに、何という口の利き方だ?こんなやつの意見を聴く必要はないぞ!」
 
こうして904号室に通された男は、食堂で少し早めの夕食を取り、部屋に戻っていった。
 
その晩、男より後に食堂へやってきた宿泊客は、原因不明の食中毒で死亡した。
前代未聞の騒動に従業員が慌てふためく中、主柱の腐敗が原因で、ホテルは全壊した。