読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「亡霊ファンド」

ウォール街の一角に、ファンドマネージャーの亡霊たちが住むオフィスビルがあった。
亡霊たちはみな、ウォール街で失敗をした怨恨から天国に行きそびれたため、生きている人間に妬みを抱いていた。
ある電球が何度取り替えても点滅するだとか、コピーに人の顔のような見覚えのないシミが映りこむといった、他愛のない嫌がらせは序の口で、様々な時代から集まった亡霊たちは一丸となって毎朝市場動向を予測し、入居会社が亡霊予測と反対の動作を行うよう、ディーラーの発注画面に小細工をした。
こうして、入居会社は次々と破綻し、ビルに住む亡霊は増え、予測の精度は上がり、ますます多くの会社が破綻した。
金融業界は何かとゲンを担ぐ。ビルは次第に空室期間が目立つようになり、オーナーはストレスでアル中になった。
そんな時、ある霊感の強い社員が、すべてを見破った。そして、別の場所に子会社を立ち上げ、ビルでの注文と反対のレバレッジをかけるファンドを作った。ビル外に出られない亡霊は、子会社の存在を知る由もなかった。
その社員が歴史に残る成功を達成したおかげで、ビルへの入居を望む金融会社が、今度はひっきりなしになった。
亡霊たちはますます正者を妬み、躍起になって予測の精度を上げた。