忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「その少女はエピソード7をまだ知らない」

休み時間が嫌いだった。何もすることがなかった。雑談で時間を潰す相手など、当然いなかった。
クラスメイトの中には、文庫本にかじりついたり、イヤホンで耳をふさいで机に突っ伏したりする人もチラホラいたけれど、彼らの仲間になることを認めたくなくて、それもできなかった。
だから、なんとなく前の時間に配られたプリントを見返したり、意味もなく鞄を整理したりした。
チャイムが鳴ると、ほっとした。
 
そんな生活が続くうち、気が付くと、学校に行くのがしんどくなった。
机に落書きをされたり、私物をゴミ箱に捨てられる、みたいなイジメを受けていたのなら、まだよかった。
でも、そうじゃない。居場所がないのだ。明確な悪人がいるわけじゃなくて、でもどうしてか、友達ができなかった。
部活に入らなかったのが、いけなかったのかもしれない。
入学式の後、自分から誰かに話しかけなかったのが、いけなかったのかもしれない。
体育の時間が1番嫌だった。クラスに女子は19人。ペアを作る時はいつも余った。
水泳の授業も、なんだかんだ理由をつけて、見学した。
日陰のベンチに座っている私と、プールではしゃぐ同級生たちとは、違う世界の生き物のようだった。
 
こうして迎えた高校最初の夏休みは、何も予定が入らなかった。
それでも、しばらく学校に行かなくていいのだから、心の底からほっとしていた。
昼前に起きると、両親はすでに会社に行っていて、家には誰もいなかった。
アイスを食べながらテレビを付けた時、それが始まった――
 
夏休み特別ロードショー。
スターウォーズ エピソード4。
 
番組が終わるやいなや、それまでJポップのCDしか借りたことがなかったTSUTAYAに飛んで行って、シリーズ全巻のDVDを借りた。
DVDが見終わると、次は本屋で手あたり次第、映画の雑誌を読み漁った。
お盆の帰省で祖父母からもらったお小遣いを軍資金に、8月の終わりに1人で東京へ行って、映画の古本やグッズを売ってるお店を回った……どれも値段の桁がおかしくて、ショーウィンドウから眺めるだけだったけど。
辛うじて買えたダースベイダーのシールを、携帯電話の裏にそっと貼った。
 
明日からまた学校だ。冬休みが来るまで、灰色の3か月が始まる。
だけど、この携帯電話を持っている時は、絶対に逃げないで学校に行くって決めた。
 
高校を卒業したら、東京の大学に出て、毎日映画館へ通うんだ。
ひょっとしたら、いつかスクリーンでルークやレイアやR2-D2に会える時が、来るかもしれないね。