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忘れるためのなぐりがき

短編小説や、映画・アニメの感想を書いています。

自作短編「10月1日」

捕虜になるのは、悪くなかった。
自分に親兄弟がいたことも、初恋があったことも、何かに命をかける覚悟を抱いて戦いに志願したことも、今となってはすべて夢の話。
日の出に起きて、制服に袖を通し、オートミールの朝食を済ませたら、あとは太陽が出ている限り鍬を振るだけ。
3年後も10年後も、僕はきっと日の出に起きてオートミールを食べて鍬を振るだろう。
そしていつか、同じようにオートミールを食べる女の子と結婚し、子どもにオートミールを食べさせるだろう。
僕の心にあるのは、ただただ圧倒的な穏やかさだけだ。
どうしてもっと早くに気付かなかったんだろう。
捕虜になるのは、悪くなかった。